ミスの注意をすると言い訳ばかりで反省の色が見えない。問題解決のための原因究明を指示したはずが、いつのまにやら犯人捜しになってしまっている。良く聞くベトナム人材の成長課題です。
ベトナム人特有のプライドの高さが原因と考えがちですが、理由はそれだけではなさそうです。
□「なぜ」は相手への不信感から出る言葉?
弊社のパソコンが不調で突然シャットダウンしてしまうため、技術者を呼んだ時のことです。技術者曰くは、内部の電源装置を交換する必要があるとのこと。なぜ電源装置を交換する必要があるのかと問うと、電源不良で内部の冷却ファンが回ったり、回らなかったりするとのこと。なぜ電源装置とファンの間の通電に問題があるのが分かったのかと問うと。。。「どうして、なぜなぜ言うのか。自分の言うことが信じられないなら、自分で直せば良い」と気分を害して帰ってしまいました。
どうにも、ベトナム人は「なぜ」を問われると、自分の考えが疑われている、自分が責められている、と感じてしまうようです。ベトナム人スタッフと外で昼食をとる際に、「ブンチャー」を食べようというスタッフに「なぜ」と聞くと、「嫌なら自分の好きなものを食べればいい」と言い放たれてしまいました。
最近ではベトナムでも「コーチング」という手法が流布しはじめ、弊社でも講座を提供したことがあります。コーチングで用いられる手法に「質問法」があり、コーチングの相手に「なぜ」を問いかけることで、相手が自分で課題を分析し、対応策を立案することを助けます。目新しいコーチングの勉強自体はベトナム人の皆さんも興味深く勉強してくれるのですが、いざ演習を行うと自身に「なぜ」を問いかけるというよりは相手を説得できる回答を用意することに注力してしまいます。また、コーチングなど知らない人からの相談で質問法を適用すると、「私が相談しているのに、なぜ質問ばかりで答えてくれないんですか!」と相手を怒らせてしまうこと必至です。
日本では、常に「なぜ」を自分に問えなど、より深く考えるための手法として「なぜ」が使われることがありますが、ベトナムではまだ「なぜ」は理由を問う、疑う以上の使われ方はしていないようです。
□“Why:なぜ”を問わずに”How:どうやって”を問う
日本でも“なぜ”にこだわれと言われ始めたのは、日本が世界的な競争で頭角を現し始めた1960年代頃のことと思います。ベトナムもそろそろ思慮深く行動すべき時期にあるように思いますが、残念ながら一般にはまだ直感や家族・友人の勧めに身を任せるのが主流に思います。社会の自然な成熟を待つだけではなく、“なぜ”と自分に問うことを時間をかけて啓蒙していく必要はありますが、目前の事業を前に進めるためには、言い訳や犯人捜しではなく、再発防止の対策を打つ行動を促す必要が短期的にも生じます。
筆者がお勧めする短期対策は「なぜ:Why」を問わずに「どうやって:How」を問うことです。ミスを犯した従業員に「なぜ」と問うても、「責めているのではなく、同じ誤りを繰り返さないようにして欲しいんだ」という気持ちはなかなか伝わりません。そこで、「なぜミスを犯したのだ」ではなく、「どうやったらミスを防ぐことができるだろうか」とHowを問うことで責めているのではないということが意識され、対策の検討に導くことができます。ただし、「ミスをチェックする人を増やせば良い」などミスの発生を前提とした短絡的な対策も出てきますので、「ミスを起こさないような根本的な対策を考えよう」と辛抱強く指導していく必要はあります。
ベトナムでもQC(小集団)活動を進めている会社も増えてきましたが、社内のQC大会でベトナムチームがアジアでも上位に食い込む成果をよく伺います。改善施策などで日本人をあっと言わせるような発想もできるベトナム人材ですので、上手に活かしていく接し方も考える必要がありそうです。
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