2020年10月5日月曜日

南北でベトナム人材はどう違う?

 「ベトナムは南北でベトナム人材が異なると言われますが、どのように違うのでしょう?」良くいただく質問です。先日、知人の会社の飲み会に招かれて参加したところ、ホーチミンより参加したベトナム人スタッフより「ハノイのベトナム人同士が話をしているのを聞くと、まるで喧嘩しているみたいです」と評していました。
 確かにベトナム人にとっても南北の違いは明白なようです。

□頑固だが気骨ある北部人、素直だが気変りの早い南部人
 皆さんご承知のとおり、ベトナムは南部と北部では気候も異なり、ベトナム人の顔つきも違い、ベトナム語のイントネーションや単語、言い回しも異なります。ベトナム人同士ですら、まま会話が成立しないこともあり、ハノイに慣れた筆者がホーチミンを訪ねると、床屋(北部ではカットック、南部ではホットック)に行くのも日一苦労です。
 筆者はハノイを主拠点としているため、北部からの視点となってしまうのと、長くベトナムにいる方も人によって見方が異なるため一概には言えないのですが、筆者が感じる南北人材の違いを簡潔に表すならば、「頑固だが気骨のある北部人、素直だが気変わりの早い南部人」となります。
 北部のベトナム人は概ね愛想がなく、外資系百貨店を訪ねても店員はニコリともしません。一方、駐車場の管理人など慣れ親しむと、雨が降った際には筆者のバイクを屋根の下においてくれるなど気配りのある対応をしてくれたりします。また、弊社のハノイスタッフなど、逆境に追い込まれるとむしろ頑張るため、意図的に仕事を多めに振って、チクチクいじめながら奮起させています。
 南部のスタッフはにこやかで穏やか、北部のように反抗することも少なく、比較的素直に指示に従ってくれます。一方、「親友です」と紹介されたベトナム人の近況を尋ねると、「あんな人は知りません」と打って変った返答をもらうこともあります。また、南部のベトナム人材は北部とは逆に、いじめられて奮起するというよりも、褒められてやる気になる人が多いように感じます。
 北部が堅苦しく、南部が開放的という風土の違いは概ねどのベトナム人も納得するところです。北部のベトナム人の多くは、南部への出張を好んで行く一方で、南部のベトナム人の多くは、道を聞いても冷たくあしらわれる北部への出張を好みません。北部への拠点展開などの際の南部人材の活用については、北部出身者を除き、留意が必要です。

□ベトナム人はベトナム人。課題は同じ
 上記のように、南部と北部では日本でいうところの東京と大阪ほどに違うのですが、弊社が人材育成の依頼をいただく際に経営者より伺う課題認識はほとんど変わりません。
 報連相ができない、問題への対応策が場当たり的、仕事の段取りが組めない、部下に指導できないといった課題は南部でも北部でも良く伺います。やはり日本と同様、土地は違えどベトナム人はベトナム人、知識や経験の積み重ねが少なく、家族中心の個人主義で他人の思いを図って行動することが苦手といった点は共通のようです。
 このため、こと教育に関しては、南部も北部も同じ内容、同じ手法で教育を進めています。しいて言えばやはり風土を反映してか、南部では比較的和やかな雰囲気で講座を進めるほうが好まれる感はありますが。

□歴史的背景と家族の出身地には留意する
 しかしながら、弊社が研修を行う際にも、言葉や風土以外に南北の違いで留意している点があります。皆さんご承知のとおり、ベトナムは北部が南部を吸収する形で統一を果たしたという点です。
 ベトナム戦争(アメリカ戦争)により、南部政府側の権力者のほとんどは海外に亡命し、南部の政治・経済は戦争中に流れ込んできた北部人と当時南部に住んいた北部政府支持の人たちで担われています。家族経営を除き、南部企業のベトナム人経営者には北部出身者が多く、「管理者には北部人を配置し、現場には南部人を配置している」などの話を聞いたこともあります。
 こうした背景のもとで、純南部出身者の中には現政府をあまり好意的に見ていない人も少なからずいます。一昨年に他界したヴォー・グエン・ザップ氏の国葬の日と、たまさか南北支社合同での社員旅行が重なった会社では、北部からは「全国民が喪に服すべき日に、華々しい行事は行うべきではない」という声があがった一方で、南部からは「それはそれ、これはこれ、大いに盛り上がろう」と、やや混乱をきたしたと伺いました。
 また、北部ではホーチミン氏の語録などを講座の内容で引用することもありますが、南部では注意が必要です。ホーチミン氏を悪く言う人はいませんが、南部ではホーチミン氏は現政府にうまく利用されていると考える人もいるようです。 南部は北部・中部・メコンデルタと多様な地域からの出身者が混在しています。特に政治や思想面では受け止め方の違いが出身地によって異なるため、従業員の両親・祖父母に遡って出身地を把握しておくことも必要と思われます。政治的な話題を評するのは、ある地域の方の賛同を得る一方、他方の強烈な反発を招くため、控えるのが無難です。

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