2020年11月23日月曜日

言葉の意味を合わせましょう

 ベトナム人採用候補者の履歴書が自画自賛の言葉で飾られていることは皆さん良くご存知と思いますが、不思議に思い何度か尋ねたことがあります。

筆者:「ここにハードワークって書いてあるけど、どういう意味?」
候補者:「仕事に集中して取り組むことです!」
筆者:「。。。。(それって、普通に働くことじゃないかなあ)」
筆者」「では、ここにプロフェッショナルな環境で働きたいとあるけど、プロフェッショナルとはどういう意味?」
候補者:「時間通りに会社に来て、サボらずに働くことです!」
筆者:「。。。。(それって、当たり前のことじゃないかなあ)」

どうにも同じ言葉を使っても、ベトナム人と日本人では理解に違いがあるようです。

□社会が異なれば、言葉の意味も異なる
 先の「プロフェッショナルな職場」という言葉については、もう少し深く聞いてみたところ、どうも当人は一般的なベトナム企業、役所と比較して「プロフェッショナル」という言葉を選んだようでした。
 確かに役人が朝はカフェで友人と歓談し、昼ごろ現れたと思ったら上役人の接待で飲みにでかけ、酔っ払って帰ってきたと思ったら帰宅する。概ね想像がつきます。
 もちろん当人に悪気はないのですが、言葉の背景にある社会環境や成熟度の違いから、言葉の意味も異なることが多いことには注意が必要です。

□言葉の意味を合わせましょう
 弊社が研修講座を実施する際にも、一般に誤解を生じている、もしくは理解が不足している言葉には注意を払って意味を共有するように心がけています。異論のある方もいらっしゃるかと思いますが、勇気を持って幾つか例を挙げてみます。
・「整理」をするとは、「要らないものを捨てる」ということですが、「要るもの=まだ使えるもの」と理解している場合があるため、「要らないもの=3ヶ月間使わなかったもの」など定義を明確にする
・「小さい問題はほっておけばよい」と考えがちなため、「小さな問題の原因が大きな被害を起こすことがある」と、事象ではなく原因に着目するよう説明する
・「対策を打つ」とは、問題の火を消し止めることだけではなく、問題の再発を防止することである
・作業は作業結果を提出すれば終わりではなく、作業結果が承認を得て終わる
・部下の作業結果に責任を持つとは、時間外までかかっても部下の作業結果を確認することである
・過ちを犯すことが過ちではなく、過ちを改めないのが過ちである
・「計画を作る」とは、期日を決めることではなく、作業を決めることである
・「期日を守る」とは期日までになんとかするのではなく、期日より前に終えることである
・「報告をする」とは言うべきことを言うことではなく、聞きたいことに応えることである
・「連絡をする」とは、伝えたかどうかではなく伝わったかどうかで評価される
・「勉強する」とは知識を吸収することではなく、知識をもとに発想することである
・「能力が高い人」とは知識や経験が豊富な人ではなく、すばやく知識や経験を活かせる人のことを言う
・「要点を明確にする」とは、話の内容をまとめることではなく、相手に期待する行動や意思決定を具体的に示すことである
・「チームで働く」とは互いに助けあうことだけではなく、チーム構成員の能力の総和以上の成果を出すことである
・「指導する」とは教えることではなく、できるようにすることである
・「原因を究明する」とは犯人を捜すことではなく、問題を生じたメカニズムを明らかにすることである
・「議論する」とは、意見を言うことではなく、案を提言することである
・「片付ける」とは、見えないところに物を隠すことではなく、問題が見えるようにし、問題を解決することである
・「管理する」とは、監視をすることではなく、監視が不要な仕組みを構築し、運用することである

□ハンドブック作成の進め
 これまで訪問させていただいた会社様には、会社の経営理念や社内で共通して使われる用語・単語について意味や目的を説明するハンドブックを作られているところもあります。
 日本でも言葉の受け止め方の違いが混乱を生じることは多々ありますが、ましてや社会環境や成熟度が異なるベトナムにあっては、同じ言葉を使っても期待するとおりに理解されないことは当たり前にあります。 普段当たり前に使っている言葉も、今一度正しく理解されているかどうかを振り返り、言葉の意味を共有して、ハンドブックを充実させていくことをお勧めします。

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