2020年11月30日月曜日

人事評価制度を現地化しましょう

 人材育成とも大きく関連することから、会社様から人事制度についてのご相談も良くいただきます。様々な会社様からのお話や、弊社でベトナム人評価者向けの研修などを実施した経験から、特に人事評価については各社に共通した課題があることが見えてきました。今回は、そうした課題の解決に向けた人事評価制度の現地化について考えたいと思います。

□公正な評価が行われないのは、ベトナム人管理者だけの問題か
 人事評価者研修などの依頼をいただくきっかけとなるのは、まずはベトナム人評価者に関する問題です。
 よく耳にするは、「評価結果がインフレする」「評価を使って部下を手なずけようとする」「人によって評価のバラツキが大きい」などでしょうか。
 確かに師匠と弟子のような日本的な上下関係のないベトナムでは、管理者は評価に慣れておらず、評価の目的を給与査定のみと捉えて、ともすれば部下との軋轢を避けるために部下の満足のいく評価を与えがちです。しかしながら、こうした誤解は評価の意味や目的が、むしろ部下の成長に向けた改善点や成長への期待の把握にあることを説明すれば理解はできます。
 一方で、評価者研修などを通じて浮かび上がってくるのが、会社の制度上の問題です。
目標管理制度を導入しているものの、目標設定の方法・手法についてのガイドラインが不足しており、目標に「期日どおりに請求書を発行する」などの日常業務が記述されていたり、一方で「10部品の現地化を進める」といった会社施策的な目標が混在していたりします。また、日本の評価基準のコピーや、経験の少ないベトナム人担当者が作成したと思われる、「仕事の完遂に最善を尽くす」「問題を速やかに解決する」といった主観的にならざるを得ない項目が評価表に掲げられていたりもします。
 こうした、曖昧な重み付けや評価基準のもとですと、各ベトナム人評価者は各々の主観的なモノサシを持って部下を評価するようになってしまいます。

□人事評価のPDCAが回る仕組み作り
 人事評価は期末のみに行われるものではなく、期初の目標設定に始まる通年の活動です。従って、期を通じてPDCAを回せる仕組み作りと運用が必要になります。
 まず大前提となるのが「職務記述書」です。役割のみが羅列された職務記述書をまま見かけますが、職務の果たすべき責任、期待される役割、持つべき能力が、各職務の違いを意識して記載されている必要があります。
 そして、各職務の遂行能力が測れる「スキルマップ」が管理スキル、技術スキル、人間スキルの観点から客観的に評価できる基準で定義されていることが望まれます。また、目標設定は各職務の内容に応じて、日常業務目標・改善目標・会社方針に基づく戦略目標や個人目標に区分され、職務レベルごとの難易度のガイドラインに基づいて重み付けがされるのが好ましいです。
 こうした仕組みを前提として、期初の目標の握り(P)にはじまり、期中の推進状況へのフォロー(D)、期末の評価とフィードバック(C/A)といったサイクルを運営していきます。
 運営上大切なのは、各人が設定した目標を達成できるように上司は日常業務を通じて後押しをすること、評価という機会を活用して上司・部下が互いに期を振り返り、反省とともに来期の目標達成に向けた改善点を識別することです。

□人事評価制度の現地化を進めましょう。
 人事評価制度のもう一つの課題は各拠点の日本人体制です。ほとんどの会社は少数精鋭の日本人で運営されており、人事専任の日本人を置ける会社は少数です。またこうした体系的な制度構築の知識や経験のあるベトナム人人事担当者を探すことは非常に困難です。
 ともすれば体力勝負にもなってしまう人事評価制度構築は、海外に通じた本社担当者の支援が得られれば良いですが、そうでなければ、仮に設計図は描けても構築まで手が回らない状態に陥ってしまいがちです。
 残念ながら、この課題への解は筆者もまだ見つけられておりません。少なくとも筆者の会社が支援できるように力をつけるとともに、各社の人事担当者を育成しつつ制度構築を進める方法を模索したいと考えています。

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