立ち上げられて間もない会社がまず苦労するのが社内でのルールの徹底ではないでしょうか。バイクは道路を逆走する、レストランではゴミを床に捨てるなど日系企業ではあるまじきルール違反が言わば社会の常識ともなっているベトナムでは、ルールを徹底することも一筋縄では行きません。
□ 上に政策あれば、下に対策あり」
「上に政策あれば、下に対策あり」は中国で言われる事柄ですが、こうした考え方はベトナムでも当てはまるように思われます。交通事故を少なくするためのヘルメット規制も、ドライバー達は自分達の自由を束縛するものとして、品質基準を満たさない安価なヘルメットをかぶって違反を回避します。
支配層がころころと変わってきた歴史を経て、一族が社会の基盤となっているベトナムでは、政府の政策は天から降ってくる押し付けごとと受け取られてしまうのでしょう。会社のルールについてもまたしかりです。
□ ルールの目的を解説し、共有する
社内ルールの展開をベトナム人担当者が行うケースが多いですが、ともすればルールの説明にとどまり、なぜそのルールが必要なのか、目的が説明されていないケースが散見されます。もとより、一般的なベトナムでの統制管理の仕方は、「ルールを発布して、守れなければ罰則を厳しくする。ルールを守るか否かは各個人の責任。」というものです。
まずはルールが各人を縛り付ける「会社のためのもの」ではなく、従業員が安全・快適に職場で協働するための「従業員のためのもの」であることを前提に、各ルールの目的を解説してあげる必要があります。「食後に楊枝を床に捨てない」など、なぜこうしたルールが従業員のために必要なのか、説明できないベトナム人担当者もいます。
□ ベトナムの現状にそぐわないルールの設定は避ける
日本での常識から、ままベトナムの実態にそぐわないルールが設定されているケースも見受けられます。
通勤時の靴の着用など、バイク通勤での安全を鑑みたルールであることは理解できるのですが、ベトナムの高温多湿な気候や突然のスコールなどを考えると、現実的には従業員に苦痛を強いるルールとなってしまうこともあります。現実との折り合いを考えてルールを設定・工夫をする必要があります。
□ マナーを高めてルールを減らす
ルール違反が常習化する人を排除する目的では、イエローカードの発行など違反の実績を記録しておくことは必須ですが、ルール設定の目的は違反者を罰することではなく、皆がルールを守れるようにすることであることを忘れてはいけません。
ルール違反者へ対処するとともに、好マナーの事例を表彰するなど、思いやりや気づきを高める施策を手がけたいものです。
また、ルールは会社が決めるもので、従えなければ従業員は退社すべきものとも受け取られがちです。しかしながら、個々の違反事例を分析すれば、ルールの改変により、従いやすいルールにすることは可能なものです。
組合や安全・倫理委員会などを通じて、守りにくいルールの改善提案を促すのは、従業員の自主性や改善力を養う上でも効果的と思います。
弊社が請け負う社内講座では、受講者が自発的に遅刻への罰金を課すことがあります(講座後のパーティの原資となる)。こうして自発的に設定したルールは守られやすいですし、違反をしても後腐れがありません。従業員がより良い職場作りを目指して自主的にルールを決められるようになることが理想と思います。
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