2021年1月18日月曜日

新たにベトナムに赴任された皆さまへ

 今年も新しくベトナムに赴任される方が多い季節を迎えました。バイクの多さや路上の風呂椅子での食事風景、ベトナム人の人懐っこさなど他国から横滑りで赴任された日本人の方々にも始めは新鮮な驚きが続く日々と思います。しかしながら、筆者もそうでしたが徐々にベトナムでの生活・職場への理解が進むにつれてストレスが溜まり易いのが赴任1年目です。

□差でなく違い
 レストランではゴミを床に捨てる、バイクや車までもが道路を逆走する、手を洗った後に拭かないためトイレのドアノブがいつも濡れている、などなどベトナム生活を知るにつれベトナム・ベトナム人材の課題が目についてきます。そんな時、つい口に出てしまうのが「日本では。。。日本人は。。。」といった日本とベトナムとを比較してしまう言葉です。
 ベトナムでの在留邦人数も13,000人を超えましたが、人口9,000万人のベトナムではわずか7,000人に1人の日本人です。「これはおかしい」と叫んでみても日本の常識など通用しようもありませんし、「ここはベトナムだ」と言い返されるのが関の山です。
 もちろん日本企業では各社なりの常識にベトナム人であれ染まってもらう必要はありますが、まずはベトナムと日本では常識が異なることを「差」でなく「違い」として冷静に受け止めることが必要です。

□ベトナム人材とのお勧めの接し方
 日本人と似ていると喧伝されるベトナム人材ですが、知れば知るほど違いが見えてきます。赴任されて間もない皆様に、筆者なりのベトナム人材とのお勧めの接し方を紹介します。

1. まずは笑顔で
 外国人は笑顔で迎えるベトナム人材ですが、ベトナム人同士の人間関係はかなりぎすぎすしています。特にベトナム企業では同僚同士の水面下での足の引っ張り合いは日常茶飯事ですので、互いに安易に気を許すことはありませんし、腹を割って本音で語るということはありません。
 ベトナム人はベトナム人に対しては慎重に接しますが、逆に気を許しやすいのが外国人です。笑顔で接することで比較的容易にベトナム人材から信用を勝ち得、打ち明け話を聞き出すことができます。甘やかして付け上がるのを恐れて(実際、付け上がりますが)強面で接してしまいがちですが、信用を勝ち得るまでは笑顔を優先することをお勧めします。

2. 叱っても怒らない
 日本では怒るのも愛情表現の一つ、怒鳴られて成長するという考えもありますし、筆者もバカアホ呼ばわりされながら鍛えられたと自負しています。しかしながらベトナムでは少し様子が違うようです。
 ベトナムでは感情を露わにするのは大人として恥ずかしいこと、理性を失い敵意をむき出しにしていると受け止められるようです。感情的に怒ると、自己防衛本能の強いベトナム人
材の中には押し黙るか逆切れする人も多くいます。あくまで淡々と間違いを指摘し、冷静に指導・叱るのがベトナム流です。ベトナム企業では部下が失敗しても怒ることはありませんし、叱ることすらないことも多いです。

3. 信用しても信頼しない
 言葉が通じないベトナムでは、それぞれベトナム人従業員の個性や特性が十分に理解できるまでは、言葉の通じる日本人好みの気の利いたベトナム人材に肩入れしてしまいがちです。ともすれば気持ちが入りすぎてしまい、この子は付いて来てくれるに違いないと思い込んでしまうこともあります。
 しかしながら、こうした相思相愛との思い込みは片思いに終わることも多いので注意が必要です。ベトナム人材にとっては「会社」の優先順位は家族や自身・友人に劣ります。口では「頑張ってxxさんの後を継ぎます」と言っても、家族から頼まれたり、自身のキャリアにつながる機会があれば簡単に心が揺らぎます。
 優秀で信用できる成果を出すベトナム人材も多いですが、決して過信しないことが大切です。2の矢・3の矢を用意しておく心積もりが必要です。

□ベトナムは人間修養の場
 ベトナムでは日本では目にしないようなことが次々起こります。信頼した部下に裏切られ、心が折れるようなこともあります。筆者は「ベトナムは人間修養の場と考えてください」と日本人の方にはお願いしています。3年も経てば大抵の問題には驚かなくなります。物事に動じない達観した心を持てるよう、日々精進ください。

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