2021年7月5日月曜日

ベトナム行政改革の道険し

 ベトナムがWTOに加盟して以降、海外からの投資を惹きつけんと投資手続きの見直しが度重ねて行われ、現在では特殊でない事業への投資であれば滞りなくライセンスが取得できるようになりました。
 しかしながら、国内の役所手続きについてはまだまだ見直しの余地が多くあり、ベトナムへ進出後のお役所とのやり取りの煩雑さには未だに頭を痛めることが多くあります。

□ ベトナム行政改革の道険し
 先回のひったくり事件の後日談ともなりますが、カバンの中に筆者の運転免許証も入っていたため、再発行の憂き目に会うこととなりました。交通違反で没収された免許証が警察に山積みになっているとのニュースからもわかる通り手続きの煩雑さは想像に難くないのですが、再発行に挑みました。
 結果はテトを含めて延べ6ヶ月、計6回交通局に通い、めでたく再発行できました。仕事の合間に役所を訪ねていたのですが、これだけの期間と回数を要するようでは確かに一般のベトナム勤め人であれば、とっくに諦めてしまいそうです。賄賂の横行とともに、警察に免許が山積みされる理由にも納得がいきます。
以下、免許証再発行の顛末です。

第1回目:弊社スタッフに代わりに行ってもらったものの、本人が行く必要ありとのことにて出直し
第2回目:申請書様式が外国人用となっていないとのことにて出直し
第3回目:結果の受領に向かうも、過去の交通違反の罰金が納付済みであることの証明書類を警察より取得するよう要請され、出直し
第4回目:警察にて罰金納付済みの書面をもらい、交通局に再提出
第5回目:免許証の受領に11時半前に行くも、既に午前の受付時間を終え、人影もなく出直し
(役所のホームページでは平日は11時半まで受け付けとなっている)
第6回目:目出度く免許証を受領

□ 最後は国民を含んだ役所手続きのコスト意識
 上記から見られるように、理想では最短2回(申請書等提出⇒再発行)の訪問にて免許証の再発行ができます。しかしながら、実態はどのくらいの数の方が筆者と同じように行き来を繰り返しているのか不明です。再発行を大半の方が行えるようにするには、以下のような手続き改革・整備が期待されます。

- 必要書類や最新の様式が常にホームページにて確認・取得できるようにしたい
 行政機関のホームページに各手続きに必要な書類の記載がない、もしくは「各決定により示された書類」といった曖昧な記載となっている、既に失効した古い様式が添付されている、などのケースが良く見られます。また今回の場合、窓口の受付時間がホームページの情報と実態とで異なっています。公式のホームページから入手したと言っても、古い様式では担当は受け付けてくれませんし、正確な必要書類は電話では教えてもらえず、窓口に並ばなければならないのが現実です。
 行政機関には具体的な必要書類と常に最新の様式・情報をホームページに掲載するよう期待します。

- 行政機関間の情報共有を進めたい
 日本でも縦割り行政は良くある話ですが、ここベトナムでも変わりません。交通局は過去の違反履歴を調べることはできたようですが、罰金を支払ったかまではわからないようです。
 ベトナムでも住民登録などの情報化は進んでいますが、行政機関を超えて情報を共有、検索できるようになりたいものです。

- 役所手続きのコスト意識を改めたい
 窓口担当者は訪問の度に個別の修正事項の指摘を行い、指摘が出尽くすまで窓口に足を運ぶ必要があります。
 窓口の担当者は申請者が何度役所を往復しようが我関せずで、淡々と職務をこなす発想しか持ち合わせていません。役所を往復すること、社会に賄賂が蔓延すること、警察署に没収した免許証が積みあがることが与える経済損失を鑑みて、手続き並びに担当者の業務手順を見直したいものです。

□ 待たれるベトナム3.0
 ベトナム経済の発展は、政府主体での経済運営のベトナム1.0から、ドイモイ政策を皮切りとする市場開放と外資誘致によるベトナム2.0を経て今日に至っています。幸い慢性的な貿易赤字は外資系企業の輸出により収支均衡状況を維持していますが、賃金上昇や高い福利厚生コスト、煩雑な手続きは徐々に投資先としてのベトナムの魅力を削ぎ、外資のみに依存する経済成長はそろそろ限界を迎えつつあるような気がします。
 反面では各種自由貿易協定による関税収入の減、付加価値税や法人税を支払わない小規模・個人事業者、高い最低課税所得や扶養控除により、大半の給与所得者が所得税を支払わない税体系など、成長に向けた果実をむさぼり食う課題も見られます。警鐘は何度も鳴らされていますが、そろそろ真剣に役所を含めたベトナム人労働者の生産性向上を核としたベトナム国民主体での成長の道を模索すべき時期に来ているのでしょう。

 別件ですが、弊社より社会保険局にレターで問い合わせを行ったところ「なぜ、こんな問い合わせをするんだ」と保険局の担当者が弊社の担当者に電話で怒鳴りつけたようです。役所への往復とともに職員の態度に閉口している従業員を応援する必要もありそうです。

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