2020年12月7日月曜日

管理姿勢サーベイ10選

 弊社が社内研修を始めて実施させていただく会社には「管理姿勢サーベイ」を実施し、研修後の指導に役立てる参考情報として提供しています。「管理姿勢サーベイ」は各社のベトナム人従業員の考え方がどの程度日本的な価値観に染まっているかを図る目的で設計したものです。今回は、様々な会社様に「管理姿勢サーベイ」を実施してきた経験から、特にベトナム的な特徴が現れやすいサーベイ項目を紹介したいと思います。

□管理姿勢サーベイ10選
1. 問い :「高い地位や特別な技術を持った従業員は給与以外にも高い待遇を受けるべきだ」
 期待する回答 :NO、「役職は役割の違いに過ぎず、給与以外は皆平等」
 この設問は”YES”と回答する方が比較的多く、「上司が良い待遇を受けることで、部下の動機付けにつながる」といったコメントが寄せられます。特にベトナム企業では管理職には個室が与えられたり、昼食のメニューが異なっていたり、通勤用車が手配されたりと厚遇を受けることが多いためと思われます。

2. 問い :「部下を褒めたり叱ったりする場合は、皆の前でするべきか」
 期待する回答 :NO、「個人別に話をすべき」
 この設問は意外に、”NO”と回答する方が多いです。日本人が外国人をしかる場合の注意事項として良く知られている内容ですが、やはりベトナム人も部下のプライドに気を配っている様子が窺えます。ただし、まま「間違いを知らしめるために、皆の前で叱るべき」というコメントがあります。

3. 問い :「会議では自分の考え方を押し通すのが良い」
 期待する回答 :NO、「参加者の意見に耳を傾け、合意案へまとめあげる」
 この設問は”YES”と”NO”の回答が半々くらいになりましょうか。”YES”と回答する方は、「参加者の意見に耳を傾けると会議が混乱する」というコメントが典型的です。会議は決定を伝える場であり、議論の場ではない。意見を求められると他の参加者の意見に耳も傾けず自身の利害だけを考えて発言する、傾向の表れでしょうか。

4. 問い :「ルールの遵守のためには、より詳細で厳しいルールを設定すべきか」
 期待する回答 :NO、「ルールが不要になるよう、皆のマナーを高める」
 この設問は顕著に”YES”の回答がでやすいです。まだルールそのものが未整備・不整合を起こしているベトナムですが、一般に「管理」とはルールを決めて発行/取り締まることであり、ルールが遵守されない場合には更に厳しい罰則を科す、と考える傾向が伺えます。

5. 問い :「会社のために頑張れと部下を鼓舞すべきか」
 期待する回答 :NO、「自分のために頑張れと鼓舞すべき」
 やや意図が理解しにくい設問ですが、顕著に”YES”の回答がでやすいです。「会社の目標達成に向けて従業員は努力する必要がある」などのコメントが得られます。まだ仕事が自身の成長や人生にどのように役立つのかと考えが至らない様子が窺えます。

6. 問い :「購入部品の品質担保は自分たちの責任か」
 期待する回答 :YES、「サプライヤを含めて品質確保・向上の努力を払う」
 こちらは顕著に”NO”の回答がでやすいです。仕入れ材料の品質問題などが生じても、「サプライヤに改善を依頼する」などの対応策を掲げるケースが多く、組織の壁を超えて問題解決を進めることにためらう様子が窺えます。

7. 問い :「生産活動の継続のため、在庫はできるだけ多く保持するべきか」
 期待する回答 :NO、「最適在庫を目指して、在庫を減らす」
 こちらも比較的“YES”の回答が出やすい設問です。「在庫不足で生産が良く止まる」などのコメントが聞かれますので、現実には在庫の確保に苦慮する様子も窺えますが、在庫が"悪”であるという考えが薄いとも思われます。

8. 問い :「管理の視点から、最も優先されるものは?(生産性、品質、安全、利益)」
 期待する回答 :「安全」
 こちらは意外にも4割程度の方が「安全」以外を回答します。安全第一は各社で叫ばれている標語ですが、各期の重点管理項目に左右され、「品質」や「利益」と回答する方が多くいます。「安全」を満たした上で「品質」や「生産性」を高めるという優先順位の理解が薄いようです。

9. 問い :「部下が作業手順に従えない場合は、従うよう強制するか、要員を交替させる」
 期待する回答 :NO、「作業手順に従えない理由を明らかにし、必要であれば手順を見直す」
 こちらは3割程度の方が”YES"と回答します。半数以上の方は部下を育てる必要性、部下に仕事をしやすい作業環境を与える必要性を理解していますが、一部の方には部下は仕事ができて当たり前、できなければ辞めるしかない、と考えるようです。

10. 問い :「他者が抱える仕事上の問題解決にも積極的に関わるべきだ」
 期待する回答 :YES、「他部門の問題にも自部門の視点から解決に参加すべき」
 こちらは会社により傾向が変わる設問です。概ね”YES"が多くなりますが、"NO”の回答が多くなる会社もあります。典型的なコメントは「自身の責任範囲以外の仕事には口を挟むべきではない」となり、人の芝生には足を踏み入れない考え方が窺えます。

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